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「大飢饉、室町社会を襲う!」清水克行

あとがきに「現在無職」とあってどんな人物かとちょと調べるとその後大学で教授になられていて、WEB中公新書にも登場してらして(アイキャッチは借りてしまいました)、いろいろ時代考証なんかもやってるということですが、この本を書かれたころは女子高の臨時講師。謝辞に教え子の女子高生をあげている著作もなかなか珍しいなというのが印象に残る。
率直なまじめな方なのだろう。

いつもそうなのだがなんでその本を読もうと思ったのか忘れちゃうんだよね。
多分どこかの書評(「選択」が多いけど)か、記事なんだけど何だったかな。
今回は多分室町から戦国時代にかけての小氷期という切り口でなんか調べてるうちに出てきたような気がする。

いま世の中は感染症で大変な状況だけれど、一方で一部の人はテレワークで健康面でのリスクもあまりなく、かつ業績も絶好調で賞与も給与もウハウハって状態になってるのは商売上接近遭遇多いのだ。

とはいってもそれは一部で一方でエッセンシャルワーカーとか言われてる公共の仕事に携わる人は過酷だし、もっとひどいのは現在の日本のある意味デフレ経済を最後のところで支えてきた、非正規雇用と言われる人たちのかなりひどい状況もやっぱり仕事柄触れることあるのですよ。

でも今のところ「餓死」という状況は日本ではあまり起きていない。
果たしてそれは平常運転なのだろうかという疑念は常々抱いていて、この国土で食っていけるのは3000万人くらいなんではなかろうかと適当に思っていたわけであります。

本書はそこまで残酷な書き方ではないし、むしろ文献を丁寧にたどって何が起きていたのかを淡々と推測して行っているだけなんだけれど、そこにある種のすごみは感じる。
京の都は死者累々なんんだよ、普通に。
で、道端で腐って疫病が蔓延し、高級公家までみんなやられちゃう。
ゲンダイでいえば都内の道々に死体が転がってて片付ける人もいなくて感染症が大爆発して、国会議員だろうが何だろうが感染してバタバタ死んでる状態。
それでもモリカケサクラじゃないけど宴会やら贈答の八朔の習慣なんかがあって日常は一応回ってるの。
つまりそこらで死んでるのも仕方ないし手の打ちようもないので神様仏様にお祈りしてる状態。

こうして書いてみると今と大して変わんないのか・・・
しかも富貴な物には有徳が求められて、時にそれは強制的なというか暴力的に有徳であらしめられたとのくだりはなかなか興味深い。
結局人は先に腸から生まれた生物の末裔なんだよな。食うモノがなければ知性も秩序も関係ない。
制御をできなかったのは室町政権の成り立ちのせいかもしれないが、むしろ気候のせいじゃないかと思わせるね。
現実にその後は戦国時代になって、分捕り合戦になって江戸になるまで奴隷貿易で輸出された人もいたろうしワイルドな時代が来たわけで、気候の回復と合わせて落ち着いていった説は納得できちゃうのだ。
本書は特に索引があるような学術的な書き方になてないけれど、先人の実績や参考となる資料がキチンと出てきて読みやすかった。

おかげで今年読む本の傾向と対策ができたような気がする。
★★★★☆

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