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「孫の二乗の法則 孫正義の成功哲学」 板垣英憲

PHP研究所

著者がまあそういう人物なので、孫正義氏の考え方なのかどうか自分にはよくわからないが、アプリやYoutubeなどでも公にしていることのようだからその解説本と思えばいいのだろう。

相変わらず古本屋で100円になった本や図書館ですぐ借りられる本を睡眠薬代わりに読むことが多いのだが、今回は最近のソフトバンクの変調が気になっていたので絶頂の評価のころのおべんちゃら本でも読む気になった次第。

起業する人の多くは、本書でいうような「志」を当初から持っている場合もあるだろうし、親の家業を継いでいく中で事業内容を変革して第2の創業ともいえるような形で「起業」する場合もあるだろう。
また、雇用先の倒産破綻や自分自身の問題、人間関係などでやむを得ず起業する場合も結構会うのではないかと思っている。そこには別に「志」なんてものはなくて衣食住何とかしなくては生きていけないという「必然性」があるだけだ。

僕はビジネスリーダーと言われる人物の書いた書籍や、評伝は読まない。
簡単に言えば興味がないのではないけれど、功成り名をあげた人物はほとんどの場合、生まれた時からなにやら高尚な「志」を抱いている場合がほとんどで、まあだからこそ自叙伝みたいな書籍出したり、評伝みたいなおべんちゃら本も出版されるのだろう。

日経の(最近は購読してないので以前の経験)「私の履歴書」に登場するビジネスパーソンはたいてい、社会人になるまで、いやなってからも「志」なんてものはないように感じてた。
糊口をしのぐ仕事がいつの間に天命の様に感じられて一所懸命やったら結果的に成果が出て自分も周りの人も世の中も喜べた、というほうが普通のように思っていた。

最近のソフトバンクグループのあばなっかしさは、本書でいうところの「二乗の法則」と名付けられた方法論の結果なのだろうか。

人権や自由といったものより、宗教(おそらく現在の中共にける特色ある社会主義も実態がよくわからないという意味で宗教的)的な価値観を優先されるところで展開されているビジネスであっても、目的達成のために(何が目的かよくわからないが)投資し、出資を求め協調していこうとする行動のどこに「志」があるのだろうと思っていた。

また、中核であるソフトバンク上場に際しての、個人投資家を馬鹿にしたようなソフトバンクからのキャッシュの流出というか親会社への資金還流と企業価値の実質的毀損を行いながら公開するというところもおかしなことをするものだと思っていた。

世界のユニコーン企業への投資と言っても、何かしら生産を行うというより、バックオフィス業務をIT技術で一元管理・迅速化を主眼とした事業が多いように思うし、Amazonもそうだが消費者にとっては一見便利なシステムがそこで働く者=結果としてそれは同時に消費者にとっては雇用の強制的な変化をもたらし、一部の者はより以上に豊かになるが、多くは単純労働・低賃金化をもたらすことに投資しているともいえるのではなかろうか。

果たしてそれは「志」・・・本書でいうコンピュータ技術によって人を幸せにすることになっているのだろうか?
もっと言えば、本当にそんな志を持ってビジネスをしてきたのだろうか?と考えざるを得ない。

本書で展開されているような方法論は、そのネーミングと整理の仕方の特徴とその「志」が起点にあるということを除けば特段目新しいものではないと感じた。
まるでTQCの講演録でも読んでいるようだ。

とはいえ彼がその出自から教職をあきらめた逸話は重要だろう。
国籍は在日3世の彼からしても我々からしてもどうでもいいことだと思われるが、祖先に対峙した時それは出来なかったわけで、ここは多分に宗教的な判断基準だ。現に彼は今は日本国籍を取得していると認識している。

「人を幸せにする」というのはとても難しいことで、その人がそう感じられるのは、生まれた時・所・環境で大きく変わるものだと思う。顔の見える範囲の人を幸せにするというのは考えやすいが、普遍的に人を幸せにするとうのは宗教だろう。

大きな時間の流れで見れば、少し暮らしを便利にしたことで、あまり普遍化して物を語るのは何か違和感があるような気がするのである。
著者が孫氏自身ではないにしろ、本書が承諾なしに出版されることはないと考えられる以上、本書の出版時あたりで、ピークを迎えてそこから先は、顔の見える人の幸せ=従業員の食い扶持の重さに撒けてしまっているのかなと思う。

きびしい人のようだから、周囲にサポートする人物が存在しないようで(北尾氏はその可能性が有ったと思うが)なんだか危ういので頑張ってほしいものである。

2019/12/28

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