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「貧者を喰らう国」阿古智子


タイトル 「増補新版 貧者を喰らう国
サブタイトル 「中国格差社会からの警告」
著者 阿古智子
出版社 株式会社新潮社
新潮選書向けに2009年刊行の同名書に加筆 2014年9月 発行
著者は中国の現地でエスノグラフィー・エスノグラフィック・スタディー(著者曰く)で近年の中国の姿を伝えている。
中国が崩壊する!・・・といった固まった視点でなく、著者の知りうる事実に基づいて、問題を抽出し将来の中国社会予測と懸念される問題を提起している内容であった。
政治的でもなく経済的でもなく、社会学的なアプローチで中国社会を分析することにより煽情的になりがちなテーマにもかかわらず読みやすい内容になっている。
ここで提示されている問題内容に関して今一つ物足りないの感じがするのはなぜか考えてみると、歴史的な流れや宗教観に関する著述が少ないのではないかと思われた。
民族の問題としては漢民族以外の少数民族問題による内政上の不安定さの要因分析、あるいは儒教を含めた宗教に関する考察について著者の経験の範囲だけでも1章を割いてほしかった。
中共の成立までの歴史を考えた場合、過去の王朝と何が違うのかを民衆の側がどうとらえているのか、この著者ならば著述することは可能であるように思える。
また、わずかに触れられてはいるものの、中国の人々の現在の宗教観も専門ではないかもしれないが知りうる立場での研究をされているだけにもう少し触れておられればより理解を深めるためにはよかったのではないかと思う。
マスコミ報道ではほとんど伝えられない実情を伝えるという意味では良書だと思うが、著者がそのエスノグラフィックスタディーの成果をもって何をなそうとしているのかやや不明確なのが残念ではある。

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