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「壊れた地球儀の直し方」青山繁晴 

青山繁晴氏の印象はよく知らないけれどなんとなく国粋主義的な志向の人。
現在は国会議員も務めながら、インターネットを通して発言の多い人物という程度。

本作は2004年に出版したものに加筆修正したうえで新書版として再度出版したものとのことで、取り扱っている事柄は当時の事なので大分記憶のかなたに行ってしまっている事も多い。
ニューヨーク、ワールドトレードセンターに突っ込むジェット機をテレビを通じてリアルタイムで見ていて、めまいに似た気持ちを覚えそこから記憶がやや飛んでいるようだった覚えがある。
そのころの、あるいはその前の時期の青山氏の動きが記されていて興味深かった。

早稲田から共同通信の記者としての活動、その後のシンクタンク創立への動き、政界との関係や国際機関との関係性など、ご本人も記しているように巧まざる運命というかべき流れの中で、事実(本人にとって)と直接触れて様々に触発されて行く経緯は劇的でさえある。

特に、アメリカの在り方、方向性を軸にした国際関係の把握の仕方などは慧眼だと思わざるを得ない部分も多々あった。

ややもすると国粋的なイメージが広く浸透してしまっているように思っていたが、基本的にはこの人はやはり「記者」なのだなと理解できる。

不思議なのは、なぜ広い視野を持ちながら、我が国は天皇の存在によって安寧が保たれているという考えに到達したのかということ。
事実に即して考えれば天皇がいたから、あるいは天皇制があったから日本国民がいたとは言えまい。
むしろなぜこの島国で人々が生きていく中でなぜ天皇制が、おそらく2世紀ごろから紆余曲折はあるにせよ形作られ、その後も継承されてきたのかという視点で考えそうに思える、経験と経歴を氏は有している。

「超国民」というのもちょっと理解しずらい。
民族の分断と統合を取り上げつつ、民族主義と国家に関する考察が本書でなされていないがゆえに国民の概念があいまいなまま「超国民」と何か定義されても理解の範疇の外になってしまっているのではなかろうか。

青山氏の著作を読むのは初めてで、ネット上の主張もよく見ているわけではない為かもしれないとは思いつつ、どこか思考に飛躍があるように感じてしまった。

トランプ・プーチン・習近平と日本の隣国で役者がそろい、あるいは中東情勢もシリア・トルコ・サウジの混乱とクルドの問題など、日本に住む私たちも世界情勢を今一度把握するという意味では参考になる書でした。

2019/02/13

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