「赤い帝国中国が滅びる日」福島香織

KKベストセラーズ

チャイナウォッチャーとして書き物をよく見かける福島香織氏の3年前の著作。
KKベストセラーズというところがポイントかもしれない。

氏があとがきで本書のタイトルが編集者の意向であると触れている。通常著者がタイトルについてあとがきで触れることは少ないと思われ、氏に違和感なり抵抗なりの感情があったということなのだろう。
謝辞でなくてこのタイトルは「私じゃない」と書かれそのまま出版する編集者というのも辛いものだ。

実際本書で、述べられていることは「チャイナリスク」の現状のレポートともいうべきもので、留学・駐在の経験とネットワークである程度事実と思われる内容で、その情報をどのように判断するかは、読者が判断すべきものだろうし、著者もそのような希望を述べている。

印象的なのは習近平が歴代最高指導者の中で「最もきれいな北京語を話す」という文章だった。
広い国なので南と北では言葉も文化も違っていると聞くが、なぜか首都は古来闘争に明け暮れている北方民族との境界に近い北京に置かれている。
清朝の遺産としての紫禁城を引き継いだと言えばその通りかもしれないが、私見では戦線の後方ベースキャンプともいうべき立地であり、南方の食料を常に収奪する北方の象徴でもあると考えているので、その地域の言語を最も美しく発音する指導者を、他地域の人間がどう見ているかを想像させるという点で象徴的だと感じた。

かの国の王朝は常に民衆の蜂起によって打倒されてきた。また主として漢民族が統治する間は戦乱が多く、北方民族が統治する間は比較的平穏な時期の様にも思える。
それが何ゆえかはわからないが、個人的には中華の語源とも聞く「夏」の時代からの文化的優越意識が、周辺部族への圧迫、あるいは収奪の歴史を生んできたのではないかと想像している。

豊かな南方と支配する北方の抗争と周辺の異民族との抗争が数千年ものあいだ繰り返される土地柄で醸成された、民衆の意識は本書でも触れらるように家族主義・血縁主義また現世主義などの基層意識を民衆に植え付けてきているだろう。
かの国はとにかく対外戦争に弱いのは歴史的に明らかだが、家族が第一という意識、またその宗教的なベースとしての「孝」が何よりも重要という儒教の考えは、「私たちの国家」より優先されるだろし、戦時の督戦隊など強制でもしなければ家族のために逃走するというのはむしろいいことなのだから致し方ない。
現在の中共は抗日戦に勝利した点が国家成立の基盤の様にふるまっているが、先の大戦の終結に際してまだ政権を取っていないのだから詭弁に近いと感じるのは無理がないのではないか。

現状、世界最大の人口を抱えて統一国家として運営できているのはひたすら皆が食えているという一点にかかっていると思うのは極端だろうか。
万が一、食えない層が出てきてそれが大きな潮流の源となったとき、その王朝は遠からず打倒されるというの歴史の教訓っだろう。
施政者はそれを何が何でも防止しなくては、自らの権力を維持できないし、かつそれが十数億の民衆のために最善と確信しているだろう。
習近平の美しい北京語はおそらくそのアイコンでだと思える。

著者は、中共という王朝の抱えるいくつかのリスクを指摘して、隣国である日本のとるべき対応策に言及している。
読後の印象では、そこはどうも付けたしで、特に尖閣に関する対応はその重要性は言うまでもなく同意できるが、戦術的な問題はおそらく専門外の事なのだろうという気がした。
隣国のリスクはかの国が巨大であるがゆえに、2000年前の大混乱の時期から東の辺境の島国に少なからず影響を与えてきたのだから、備えるべきは当然だ。
特に統治の優先度に対して、人権や自由などというモノは劣後するという認識の権力機構が崩壊するようなとき、何が起こるかなど想像するのは困難だ。

本書の出版から3年たって、いよいよリスクは深層に潜りこむようなレベルになっていると思われる。
昨年末から起きている新型肺炎の対策として人口1100万人の年を封鎖するなどという、民主国家では想像もつかない対策を最高指導者が行う国家にそう長い将来はない様な気がしている。

編集者と著者の温度差が想像されるという点でなかなかユニークな書籍であった。


  2020/01/24

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