前作に続く第二弾なので読んでみたって、発行はもう4年近く前。
COVID19によるパンデミック前の対談放送出版であります。
おそらくだけど放送そのものを制作することが著者の丸山氏の目的ではなく、出版するための方便のような気がしている。
放送も録画してあるのだが、対談の合間やプロローグ・エピローグがメインディッシュであって、名だたる登場人物は素材。
内容はこのころ深化していた中露(本書の中で不思議なほどどちらも話題として登場しないが)とアメリカの対立が影響しているのか、トランプや難民で揺れる欧州での資本主義について語るためコーエンとセドラチェクが取り上げられ、著者丸山氏の意向なのだろうと思われるガブリエルが絡んできて、本書の巻末の丸山氏の「総括」に至る筋書き。
技術の進歩・発展が既に資本主義社会で人々を一律に豊かにするものではなく、むしろ分断と格差をもたらしているというのは直感的に理解できるし、分析としておそらく正しい。
セドラチェクが「道徳」というのはその方向ではやがて破滅に至るということを示唆しているのだろう。
ガブリエルを登場させているのは「世界は存在しない」というキャッチフレーズがセドラチェクとの対話で出てきた社会の見えざる手は存在するのかとの問いに対応している。
全体の絵は著者の意図したところにとりあえず着陸しているようだ。
おそらく著者は資本主義に今のところ打ちのめされた共産主義が、何か姿かたちをかえて新しい経済のあり方に向かうと予想し、かつ期待しているのではないかと感じた。