
高校を卒業して40年もたつと、日本史全体の概論を読むことなどほぼなくなっていた。
テレビなどで昔学校で教えていたことが今は変化しているなどという報道を見ることはあっても個々の事象に関してのことでしかないし、歴史観はそうした意味では高校程度までに植え付けられた内容が私にとって、あるいは多くの人にとって常識となってしまっているだろう。
僕は大学は一応文学部で、母校の中では歴史を扱う先生のいるところではあったが、学校にほぼ出席しないうえに専攻も全く関係ないから、振り返っても日本史の知識は高校教科書レベルだ。
昨年あたり、「日本国紀」とかいうトンデモ本の仲間みたいらしい本が出ていて、社会現象ともなっていたが、作家も出版社も筆が滑ったりして沈黙の方向で騒動も沈静化している。
「日本国紀」が100円均一で古本屋にあれば買うのだが、1000円以上も払ってゴミになることが確定のものを購入するのも何なので買っていない。図書館は36冊あるみたいだが400人以上の予約があって残念ながら読んでもいない。
何物かを販売するうえでの戦略としてはとても優れていると思っているの、内容を確認したいが版を重ねたものだと面白みが失われているらしくじっと借りられる順番を待つしかない。
本書は元共産党員の歴史学者が、日本の歴史全26巻の「本格的通史の劈頭を飾る」1冊だそうだ。
僕が本書を知ったのは、何か書評めいた文章の中で日本通史を語るうえでは必読みたいなことを目にしたせいだ。
読んでみて気になったのは、転向した旧共産党員の文章の香りがンすること。逆に言えばかなり著者の肉声に近いのかなとも思いながら、史書としては読みにくい文章が一部見られる。
それは、戦後の史学がたどった道程の生々しさともいえるのかもしれない。
前置きはこんなところ。
本書の切り出し、「日本」というのはいつだれが決めて、「日本」という国はいつからあるのか、そこから問うているのは教科書知識で過ごしてきた者には新鮮だ。
時間割にも「日本史」試験科目も「日本史」、縄文時代に日本はなかったのに「日本の縄文時代」、確かにそこを問わずして歴史を語り始めると、先のトンデモ本らしき史書の内容と聞くものと、学問として歴史を研究することの差別化は出来なくなるかもしれない。
最近はやりのダイバーシティとか言わなくても、琉球の人と東北地方の人の生活・体格・言語など単一民族とかはなはだおかしいくらい違う。ましてアイヌはさらに独自性を維持してきているだけに差違がはっきりしているように思う。
「日本」の成立を、国際的な関係や、神仏宗教的異界との関係で考察してうえで8世紀ごろとし、ともかくもそれ以降継続している現天皇王朝の検討を行おうとする点、またそれ以前とそれ以降においてもその時々の多様な実態を検討する必要性を訴えている点は好ましく感じる。
僕は、史書が大陸の王朝交代での正当性を記録するために作られてきたと思っているので、おそらく正史に書いていないことのほうに真実があると信じる者だ。
考古学の技術的な進歩は様々な言語によらない事実を以前に増して示してくれるようになっているし、地質や気候に関する研究も手法も内容も新しくなっている。
近代史はもちろん重要だが、我々の世界では未だに2000年程度前の出来事(歴史的には考古学的な範疇だろうと思うが)での争いが続いたりしているし、若いころには思いもしなかったが、200年前などというのは自分の高祖父母のころの話で、歴史の大きな潮流を考えるには1000年、10000年単位なのかとも思う。
豊田有恒氏の本で出てきた、「聖徳太子は何語で師と話していたか?」と同じように印象的な「日本とは何か」書名である。
おそらく、現代国家かつ先進国と言われるまで至った集団で、ここまで出自がはっきりしない集団は他に地球上にないのではないか。
似たような現代国家としては日本と同様の島国が思いつく。
ゴルフと会食しかやることがないように見えるソーリ・副ソーリ(彼は鉄砲もあったね)あたりも真面目に日本通史として読んでなければ読んでほしいと感じた。
トンデモと言われるほうは目を通してみたいだが、漢字が読めないのに大丈夫かと心配してる。
2019/07/30
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