先日不動産特定事業法(以下不特法)の一部が改正されて公布された。施行は12月1日とのこと。
いくつかの改正がある中で一般の町の不動産業者に関係すると思われて興味深いのは、小規模不動産特定事業の創設だ。
〇 不動産特定事業の法律の条文の規定
不特法・第二条 4項
この法律において「不動産特定共同事業」とは、次に掲げる行為で業として行うものをいう。
ちけんsy
一 不動産特定共同事業契約を締結して当該不動産特定共同事業契約に基づき営まれる不動産取引から生ずる収益又は利益の分配を行う行為(前項第一号に掲げる不動産特定共同事業契約若しくは同項第四号に掲げる不動産特定共同事業契約のうち同項第一号に掲げる不動産特定共同事業契約に相当するもの又はこれらに類する不動産特定共同事業契約として政令で定めるものにあっては、業務の執行の委任を受けた者又はこれに相当する者の行うものに限る。)
二 不動産特定共同事業契約の締結の代理又は媒介をする行為(第四号に掲げるものを除く。)
〇 不動産特定事業を営むための要件
不特法・第三条 1項
不動産特定共同事業を営もうとする者は、主務大臣(一の都道府県の区域内にのみ事務所(本店、支店その他の政令で定めるものをいう。以下同じ。)を設置して不動産特定共同事業を行おうとする者(第三号事業又は第四号事業を行おうとする者を除く。)にあっては、当該事務所の所在地を管轄する都道府県知事)の許可を受けなければならない。
この要件に追加変更される内容は国交省のホームページによる報道発表資料が分かりやすい。
(2)不動産特定共同事業法の一部を改正する法律の施行に伴う関係政令の整備に関する政令
〔1〕小規模不動産特定共同事業の出資額
1)事業者が一人の事業参加者から受けることのできる出資額の上限を100万円とする。
ただし、特例投資家については、自ら投資に関するリスク判断ができることから、当該事業に関する出資総額を超えない範囲内である1億円とする。
2)事業参加者からの出資の合計額(=出資総額)の上限を、1億円とする。また、小規模第2号事業者が複数の特例事業者から委託を受ける場合、その取り扱うことのできる事業の出資総額の合計の上限は、10億円とする。
〔2〕小規模不動産特定共同事業者の登録に係る資本金又は出資の額
小規模不動産特定共同事業者の最低資本金の金額については、1000万円とする。
簡単にまとめれば出資総額1億円までの事業案件ならば、不特法の「許可」ではなく届出で事業はできるようになり、かつ出資者も一般の方で個々の投資額は低額でクラウドフゥンディング等の手法が使えるということになった。
クラウドファウンディングに関してはもっぱら今回創設された小規模を念頭に置いたものだろう。
問題は「志ある資金」とは何を指すのかだと考える。
不動産特定事業が不動産の流動化促進の一環として展開されてきたと認識しているが、一定水準以上の規模の不動産を証券化することにより流動性を高める、あるいはリスクの分散をはかるということにより、投資家の収益性に関する信頼度・自由度を高めることが可能となり、収益を上げる目的の資金がより集まりやすいという目的があったと思う。
ここで国交省の想定する小規模不動産特定事業の対象となる物件についてイメージしてみる。
私鉄駅前商店街の旧マーケット:今はあまり見かけなくなったが昭和時代にはどの駅にもいろいろな店舗や飲食店、場合によっては医院などが雑居するような形のマーケットがあった。
八百屋やさかなやはかろうじて営業しているが雑貨店や文具店・おもちゃ店などは当の昔に営業をやめてシャッターが閉まったまま。飲食店はなぜかインド料理店が新規に出店していたりする。
地権者は入り混じって借地の店もあれば借家の店もある。
正直言って手を付けるには手間がかかる割に、容積が低いためにまとまったとしても収益にはつながりそうもない・・・そんなミニアーケード(自分の自宅近くにもある)
駅からさほど遠くない幹線道路に面した古いアパート、容積は高いけれど規模が小さく、レンタブルはどう考えても低くそのうえ再建築するには防火指定があるため高コスト・低収益。地権者にすれば高齢化してしまった入居者ばかりで空室になったら募集もせず全部空いたら駐車場。
なぜ、再開発あるいは再生利用できないかと言えば、「儲からないから」に一言に尽きるだろう。
国交省のホームページのよれば以下のようなこともやっている。
小規模不動産特定共同事業を活用した遊休不動産の再生に向けた専門家派遣等の支援事業を行うため、本日6月19日より7月12日までの間、支援対象となる事業者等を募集します。
人口減少等を背景に、全国において空き家・空き店舗等の遊休不動産が増加しています。
このような遊休不動産をクラウドファンディング等小口の投資資金を活用して再生する取組を促進するため、小規模不動産特定共同事業に係る特例の創設等を内容とする不動産特定共同事業法の一部を改正する法律が第193回通常国会にて成立し、公布の日から6か月以内の政令で定める日から施行される予定です。
国土交通省では、小規模不動産特定共同事業を活用した遊休不動産の再生事業を行おうとする事業者等に対する専門家派遣を通じて、事業の実施に当たってのノウハウや課題等を抽出・整理し、小規模不動産特定共同事業を活用した遊休不動産の再生の取組の普及を図ることとしています。
このため、本事業による支援を希望する事業者等を広く募集します。
ここで派遣される専門家は、株式会社価値総合研究所の研究員の方らしい。
参入の障壁は資本金1000万円以上の宅建業者だからかなり低くなっているが、1億円までの事業でどんなことが可能か、法律作った側で想定できていないように思われる。
少なくとも、自分のイメージできる範囲で1億円までの事業では、地権者が事業計画の趣旨にあった評価で不動産を手放して、投資家の側に回ってくれなければ成り立ちそうもない。そのためもし事業化可能な案件があればぜひアドバイスなどしてもらいたいものだとは思う。
空家の問題・人口減の問題にどのように不動産業務に係わるものとしてどのように取り組むべきか考えていく。
2017-08-28