自分用メモ 国税庁法令解釈通達         第18条関係 質権及び抵当権の優先額の限度等

優先債権額の範囲

(債権額の限度)

1 法第18条第1項の「債権額を限度とする」とは、法第15条から第17条まで《法定納期限等以前に設定された質権の優先等》の規定により国税に優先する質権又は抵当権により担保される債権額のうち、法第18条第1項の規定により国税に優先する元本債権額について、その質権者又は抵当権者に2又は3の通知書が送達された時の元本債権額に相当する金額を限度とすることをいう。
なお、上記の通知書が送達された時までに根抵当権の元本債権額が確定しているときは、法第18条の規定が適用されないことに留意する。
 また、利息及び遅延利息については、通知書が到達した時の元本に対するものに限られるものでなく、被担保債権とされる確定した元本全体に対するものについて、極度額の範囲内で優先する(民法第398条の3第1項)。

(差押えの通知を受けた時)

2 法第18条第1項の「差押の通知を受けた時」とは、質権又は抵当権の目的となっている財産を差し押えた場合において、差押えの通知書(法第55条)又は差押調書の謄本(令第22条第1項ただし書、第2項)が、その質権者又は抵当権者に送達された時をいう。

(交付要求の通知を受けた時)

3 法第18条第1項の「交付要求の通知を受けた時」とは、質権又は抵当権の目的となっている財産につき交付要求又は参加差押えをした場合において、法第82条第3項《質権者等に対する交付要求の通知》の規定による交付要求の通知書又は第86条第4項《質権者等に対する参加差押えの通知》の規定による参加差押えの通知書が、その質権者又は抵当権者に送達された時をいう。

(根抵当権の確定との関係)

4 根抵当権により担保される元本は、根抵当権者が、根抵当権の目的となった財産に対する滞納処分による差押えがあったことを知った日から2週間を経過したときに確定する(民法第398条の20第1項第3号。ただし、根抵当権者が滞納処分による差押えをしたときは、同項第2号によりその差押えの効力が発生したときに確定する。)が、国税に優先する根抵当権の元本債権額は、根抵当権者に2の通知書が送達された時の元本債権額に相当する金額が限度となる(法第18条第1項本文)。
なお、滞納処分による差押えがあったことを知った日から元本確定(民法第398条の20第1項)の日までの間に増加した根抵当権の元本債権額は、その根抵当権に後れて登記した担保権には優先する(同法第373条)ことに留意する。

(根抵当権の確定事由の効力の消滅との関係)

5 滞納処分による差押えが解除された場合には、根抵当権の担保すべき元本は確定しなかったものとみなされる(民法第398条の20第2項本文)。当該差押えに対してした参加差押えは参加差押えをした時にさかのぼって差押えの効力を生じることになるから、この差押えとの関係においては、根抵当権者が参加差押えのあったことを知った日から2週間を経過したときに、根抵当権の担保すべき元本は確定する。
なお、次に掲げる場合には、差押えを解除しても、根抵当権の担保すべき元本の確定の効果は、消滅しないことに留意する。

(1) 根抵当権者が当該財産に対して滞納処分による差押えをしたとき(民法第398条の20第1項第2号)。

(2) 根抵当権の担保すべき元本が確定したものとしてその根抵当権又はその根抵当権を目的とする権利を取得した者がいるとき(民法第398条の20第2項ただし書)。

(差押え又は交付要求の競合)

6 差押え又は数個の交付要求(参加差押えを含む。)が競合して行われた場合においては、それぞれの通知を受けた時の債権の元本の額が、それぞれの差押え又は交付要求に係る国税との関係において、法第18条第1項の債権額の限度となる。
なお、上記の場合において、三者間で優先関係が交錯して、その優先順位を定めることができないときは、法第26条《国税及び地方税等と私債権との競合の調整》の規定に準ずるものとする。

〔例1〕根抵当権(設定登記 平成17.7.29)極度額・・・・・・・・・・・・1,100万円

差押通知時(平成18.5.12)の被担保債権(元本)・・・・・・・・1,000万円

交付要求通知時(平成18.5.19)の被担保債権(元本)・・・・・700万円

配当時の被担保債権(元本)・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・900万円

差押国税(法定納期限等 平成18.3.31)・・・・・・・・・・・・・・・800万円

交付要求地方税(法定納期限等 平成18.1.31)・・・・・・・・・1,200万円

換価代金・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・2,000万円

(1)  上記の例において、根抵当権が設定された財産につき、滞納処分による差押えをし、地方税の交付要求がなされた場合には、配当時における根抵当権の被担保債権(元本)900万円のうち、根抵当権の交付要求通知時における被担保債権(元本)700万円は差押通知時の被担保債権(元本)1,000万円よりも小さく、この限度においては法第18条第1項本文の規定により国税及び地方税のいずれにも優先するから、換価代金2,000万円のうち700万円を根抵当権の被担保債権(元本)に充てることとなる。

(2) 根抵当権の被担保債権(元本)の残額200万円(900万円-700万円)と国税800万円、地方税1,200万円とは、次のとおり、三者間で優先順位が交錯してその優先順位を定めることができない。

イ  根抵当権と国税の間においては、根抵当権の被担保債権(元本)200万円は、(1)の700万円と合わせても、差押通知時の被担保債権額(元本)1,000万円の範囲内であるから、法第18条第1項本文の規定により国税に優先する。

ロ  根抵当権と地方税の間においては、根抵当権の被担保債権(元本)200万円は、交付要求通知時の被担保債権(元本)700万円の範囲外である(上記(1)で既に700万円の配当を受けることになっている。)から、法第18条第1項本文の規定により地方税に劣後する。

ハ  国税と地方税の間においては、国税は、法第12条第1項《差押先着手による国税の優先》の規定により地方税に優先する。

(3) そこで、法第26条の規定に準じて、次のとおり、配当額を計算する。

イ  法第26条第2号の規定に準じて、換価代金の残額1,300万円(2,000万円-700万円)を、1地方税1,200万円、2根抵当権の被担保債権(元本)100万円(換価代金2,000万円-(1)の金額700万円-地方税1,200万円)、3国税0と定める。

ロ  法第26条第3号の規定に準じて、国税及び地方税に充てる金額は、法第12条《差押先着手による国税の優先》の規定により、差押国税800万円、交付要求地方税400万円となる。

ハ  法第26条第4号の規定に準じて、根抵当権の被担保債権(元本)に100万円充てる。

(4)  上記の結果、配当額は次のとおりになる。

根抵当権の被担保債権(元本)・・・・・・・・・・・800万円

差押国税・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・800万円

交付要求地方税・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・400万円

(破産手続等との関係)

7 破産手続又は企業担保権の実行手続との関係においては、法第18条第1項の規定が適用されることはない(令第36条第4項参照)。

第三者に帰属する担保財産に対する滞納処分等との関係

8 国税につき徴している第三者に帰属する担保財産(担保権の設定時において納税者に帰属していたものを含む。)を滞納処分の例により処分する場合には、担保権の効力として配当を受けることとなるため、法第18条第1項の規定は適用されない。また、法第22条第5項《担保権付財産が譲渡された場合の国税徴収のための交付要求》の規定により交付要求をする場合には、法第22条第1項に規定する質権者又は抵当権者が配当を受ける額から徴収するものであり、法第18条第1項の規定は適用されない。

第1項本文の規定の適用除外

(権利を害することとなるとき)

9 法第18条第1項ただし書の「権利を害することとなるとき」とは、差押え又は交付要求に係る国税に優先する先順位債権者の差押え等の通知後増加した部分の債権額は、その国税には劣後するが、その国税に優先する他の債権を有する者(以下第18条関係において「後順位債権者」という。)の債権に優先するため、先順位債権者に配当すべき当該増加した部分の債権額を法第18条第1項本文に従って国税に配当することにより、後順位債権者が配当を受けられなくなるときをいう。

〔例1〕 法第18条第1項ただし書の「権利を害することとなるとき」に該当する例

第1順位 根抵当権甲

差押通知書送達時の被担保債権(元本)・・・・・・・200万円

配当時の被担保債権(元本)・・・・・・・・・1,000万円

第2順位 抵当権乙の被担保債権・・・・・・・・・・・・・・・・400万円

第3順位 差押国税・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・500万円

換価代金・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・1,500万円

(1)  上記の例において、国税に優先する根抵当権及び抵当権が設定された財産につき、滞納処分による換価をした場合、法第18条第1項本文の規定のみによると、換価代金1,500万円は、1差押通知書の送達時の根抵当権甲の被担保債権(元本)に200万円、2第2順位の抵当権乙の被担保債権に400万円、3第3順位の国税に500万円、4根抵当権甲の被担保債権(元本)に400万円(1,500万円-1の200万円-2の400万円-3の500万円)がそれぞれ充てられることとなる。

(2)  しかし、第1順位の根抵当権甲は、第2順位の抵当権乙に優先するため、抵当権乙の被担保債権に充てられる400万円は、法第26条の規定に準じて、根抵当権甲の被担保債権(元本)に吸い上げられ、根抵当権甲の被担保債権(元本)1,000万円((1)の1の200万円+(1)の4の400万円+(1)の2の400万円)、抵当権乙の被担保債権0、国税500万円という配当になる。

(3)  この結果、抵当権者の権利は、国税が優先配当を受けることによって害されたことになる。したがって、法第18条第1項本文の規定は適用しないで、法第16条《法定納期限等以前に設定された抵当権の優先》の規定により配当計算をすることになるから、その優先順位どおり1根抵当権甲の被担保債権(元本)1,000万円、2抵当権乙の被担保債権400万円、3国税100万円(換価代金1,500万円-1の1,000万円-2の400万円)の配当額となる。

〔例2〕 法第18条第1項ただし書の「権利を害することとなるとき」に該当しない例

第1順位 根抵当権甲

差押通知書送達時の被担保債権(元本)・・・・・・・400万円

配当時の被担保債権(元本)・・・・・・・・・1,000万円

第2順位 抵当権乙の被担保債権・・・・・・・・・・・・・・・・300万円

第3順位  差押国税・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・500万円

換価代金・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・1,000万円

(1) 上記の例においては、換価代金は1,000万円であり、配当時において、抵当権乙に優先する根抵当権甲の被担保債権(元本)は1,000万円であり、もともと抵当権乙は民法その他の法律の規定(法第18条第1項本文の規定を除く。)によっては配当を受けることができないのであるから、抵当権乙に配当をしないこととしても、その権利を害したことにはならない。

(2) この結果、1根抵当権甲の被担保債権(元本)700万円(差押通知書送達時の被担保債権(元本)400万円+抵当権乙から吸い上げた300万円)、2国税300万円の配当額となる。

(他の債権を有する者)

10 法第18条第1項ただし書の「他の債権を有する者」には、先順位債権者と後順位債権者とが同一人である場合のその後順位債権者も含まれる。

(この限りでない)

11 法第18条第1項ただし書の「この限りでない」とは、同条第1項本文の規定を適用することにより後順位債権者の権利を害することとなる場合には、同条第1項本文の規定を適用しないことをいう。

増額の付記登記

(根質権等の増額の登記)

12 根質権又は根抵当権の債権額を増加する登記には、次のような登記がある。

(1) 根質権により担保される極度額を増額する変更契約による極度額の登記

(2) 根抵当権により担保される極度額を増額する変更契約による極度額の登記

(3) 利息若しくは遅延損害金を増加する変更登記(変更登録を含む。以下同じ。)又は利息若しくは遅延損害金に関する定めの登記がない場合にその定めを新たに登記する登記

(質権等の増額の登記)

13 質権又は抵当権の債権額を増加する登記には、次のような登記がある。

(1) 債権額の一部が被担保債権として登記されている場合においてその被担保債権額を増額する登記

(2) 利息を元本に組み入れる場合の債権額増額の登記

(3) 利息若しくは遅延損害金を増加する変更登記又は利息若しくは遅延損害金に関する定めの登記がない場合にその定めを新たに登記する登記

(付記登記)

14 債権額の増額の登記は、登記上利害関係を有する第三者がないとき、又は登記上利害関係を有する第三者の承諾書若しくはこれらの者に対抗することができる裁判の謄本が提出されたときに限り、付記登記(付記登録を含む。以下同じ。)によりすることができる(不動産登記法第66条、自動車登録令第2条等)。

(設定の時期)

15 付記登記により債権額を増加する登記がされた場合には、その順位は主登記(主登録を含む。)の順位によるが(不動産登記法第4条第2項、自動車登録令第3条等)、法第15条から第17条まで《法定納期限等以前に設定された質権の優先等》の規定の適用については、その付記登記がされた時に、その増加した債権額につき質権又は抵当権が設定されたものとみなされる。

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