不動産市況考察 2020年10-12月期

新年おめでとうというのが憚られるようなCOVID19感染拡大状況になっている。
思えば昨年の今頃はまだニュースの片隅にも登場していなかったように思うが一変してしまった。

昨年春の時点で「緊急事態宣言」がなされるまでの政府のドタバタぶりと宣言による、経済活動の落ち込みが顕著だったころは、その時点から先の不動産市況は商業系。住居系とも絶望的と考えていた。

ところが、感染症対策として世界中の政府による超大型の財政出動が発表されるにつれ、まず株式市場が反応した。
年末には日経平均27000円となり、バブル期以来の高値更新となったわけだが、年末年始の感染拡大により再度不透明になっているのかもしれない。

不動産は持ち運べないので外出を制限されるような事態では動きようがなかったが、一時落ち着いた2Qに入って活性化して、3Qに入っても個人の住居系の取得意欲は旺盛なまま推移しているように思う。

実際の販売の現場でのユーザーの感覚は「インフレ懸念」の一言に尽きるのではなかろうか。
これだけ流動性が供給されるとその価値が相対的に下がって、実物資産価格の上昇が見込まれると感じるのは自然と思う。
当面の経済的停滞は避けられないにしても、過去の事例に即してみれば感染症対策はいずれ収まる、それも数年以内に。資産価格の上昇はその取得に長期のローンを伴うという意味でもっと長い期間でユーザーに負荷がかかる可能性があると感覚的に判断しているようだ。

商業系は悲惨な状態が当面は続くだろうが、むしろチャンスと考える富裕層も多い。
住居系とは違って鉄火場的要素があるが実際売り一色の地合いは富裕層には千載一遇なのだろう。

それにしても、地価の上昇水準をはるかに超えるマンション価格の上昇は理解しがたい。
これまで供給されてきたマンションの再建築への道筋がほとんどできていない状況で、いずれ価値が下がっていく建物価格が大半の住居がここまで価格が上昇しているのはひとえに低金利のためなのだろう。
とすれば、今後感染症が収束に向かうとすれば、過剰な流動性によるインフレに対処しなければならないような状況が生まれた場合、一般のユーザーが賃料と比較して取得を選ぶことのできる金利水準を超える可能性もあり、直近ではないにせよ5年先頃には現実のモノになることも考えておかなければならないだろう。

これから取得する層の大半は資産と言えるものがないから取得したいのであって、よほどのないことがない限りローンを利用する。
現在の住宅取得世代の大半は、住宅ローン金利が6%の時代は想像もつかないだろう。
高度成長期の様に賃金も上昇するのであればいいだろうが、国際分業の進んだ現在どうなるかは全くわからない。
バブル期と異なるのはそのような知見がインターネットなどを通じて簡単に手に入り、そのため物件の選別が厳しくなっているということもまた事実だと感じる。

「ワーケーション」などという訳の分からない省エネルックみたいな発想が中央官庁の官僚によるものだとすれば国の将来を憂いてしまうが、幸いにも一般ユーザーは、そんな戯言は聞き流しているようだ。

一般ユーザーがきちんと出口戦略を見据えながら動いている現状だと、条件のいい住居系物件の市況はしばらくは堅調と思われる。
懸念事項は感染症による行動規制が長引いた場合の消費減退・景気の後退・雇用の悪化などだろう。
また行き過ぎた新自由主義的な政策が続くと、世情が悪化して国内はともかく世界経済が混乱に陥る可能性も否定できない。

3Qは不動産市況は住居系に関しては非常に堅調、商業系は専門ではないがそれなりに底堅い動きだあったようだが、今後感染症拡大を契機として、これまでの問題点・・・全体として格差の拡大の問題・・・が噴出してくる事態も有り得るということ、そして何より感染症のあおりともいえる状態で起きている食料安保の問題などで大きな混乱が起こり可能性も有り得るということ、などに留意しながら動く必要がありそうだ。

2020/01/06

PAGE TOP
タイトルとURLをコピーしました