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「未来の地図帳 人口減少日本で各地に起きること」      河合 雅司

ベストセラーとなった「未来の年表」の著者の本。
元産経新聞論絶委員など務めた方とのこと。
未来の年表は、かなり具体的な内容を予測しており興味をひかれながら読むことができたが、今回は意図がどこにあるのかわからず、読み進むことが苦痛だった。

口絵の部分こそ多少ビジュアルに訴えるものがあったが、本文のほぼ9割が言葉とデータの羅列の印象。
少子化で消滅する自治体があることははっきりしているのだから、そのことはもっと端的にまとめることができるしそうすべきだった。
データだけなら国が数字ばかりの図表をいやというほどホームページで公開している。

著者からの、問題提起は特になく、今後の対策として東京圏など人口集積地と外国の様に衰退した地方の関係を構築するという、訳の分からない指針を出しているように感じた。
ドット型とか王国という表現で地方の人口減少地域は独立自営の経済圏をもって、都市部と併存していくみたいなユートピア論になっている。
地方の王国は単独で維持できないからこそ、人口減少に悩み、出産期の女性を留め置けない魅力のない地域になっているものなのに。一体どうしてそこが都市部と併存していけると主張できるのか謎だ。

全く個人的な考えだが、ヒトも生き物であり、なおかつ出産から乳児がある程度自立するまでの期間の女性の負荷は、野生動物の比ではないくらい重いと考えている。少子化問題は、まず一義的にはこの負荷の軽減がなければ難しいと思っている。
具体的には経済的な問題が最大ではないかと思う。都市部で3人4人と出産するためには住居費・教育費の問題がかなり大きく阻害要因になる。
次に女性の能力を生かすために育児のアシストもおそらく欠かせない。自宅で作業しながら子育てもできるというのはまだまだ厳しい。

ボクのようなものでも少子化の原因は?と考えた時にそんなことくらいは思いつく。
この著作の中では少子化は結果として自明のことのように扱われ、問題がどこになるのかはほとんど考察されていない印象だ。

そのため、人口減少はあらがうことのできない問題として床の間の絵のようになってしまい、そこは触らずに策を弄している感がぬぐえない。
推察するに、前2作(未来の年表。未来の年表2)が出版的に成功したために、無理くり紙数を稼いで1冊になんとかしたというところだろう。

具体的な提言ができないならば、本気で分かりやすい地図帳を作成し、読者の想像力を助け、一人ひとりの行動を促す材料の提示に徹すべきだった。
たまたま。図書館で見かけて読んだが、これでは話題にもならなはずだ。
購入して読む本ではなかった。

2020/07/23

 

 

 

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