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「中国台頭の終焉」 津上俊哉

日経ブックプラス

アイキャッチ著者写真は氏のホームページ (津上工作室)のものです。

時事ネタの新書は10年経って読むと結果が出ていることが多いので答え合わせができる。

本書での予測は数字に関しては的中といっていいのではなかろうか。というより事実に基づいて推計すればいいだけなので的中というより予想されたことが現実になっただけの話かもしれない。

中共の人口は減少に転じ、高齢化は待ったなしでより深刻化している。比較するなら日本はまだましであるとも思える。
確かに高齢者で困窮する割合が増加しているともいわれるし、人手不足も現実的に切迫してきた。また国債の発行残高もGDPの2倍とどうしてこれで成り立っているのか不思議な状態ではある。
国内で国債消化できてるから、国民が国に金貸している状態で、そこそこ成り立っているからなのか、日銀が国債大量保有してバッファしてるから円安にはなってるがまだ回っているのかしらんけど、まだ何とかなっている。
抜本的になんとかしないといけないかもしれないが、考えてみれば国情が平和で、問題だらけといっても民主主義で選挙は一応機能してるし、政府批判しても命の危険にすぐむすびつくわけでもないわけで、これで国際的に労務費が安くて、気候もまあまあ温暖で、水にそれほど困ってもいないし、その気になれば農地にできる土地もまだあるとし、世界の中でもまれな安全地帯で労賃も安いのだから浮上するしかないのではなかろうか。

かの国ではもはや出生率の向上は見込めないだろうから恐るべき高齢化社会がやってくる。少数民族は比較的多産だが「中華民族」という幻想の中で押しつぶされているようだ。国力のピークは過ぎたとみるべき状態になったのは本書の予測と符合する。
また経済的に不動産の利用権の開放、農村と都市の二元的管理などいくつも起爆剤を使い、恐るべきマンパワーで急速に発展することができたのは、やはり潜在的な能力は高いのだろう。しかし、そのエンジンの一つである不動産が本書出版時にすでに行き詰りつつあったものが、現在は顕在化してもはやどうにもならないという事態になっているのは本書の予測を超えたかもしれない。
日本のバブルの後始末でもリーマンショックでも、金融に結びつく危機は、あとになるほど穴は大きくなってしまう。実体経済の何倍ものマネーが投資という名前でレバーの先にくっついている。

本書では官と民の関係が中共にあってはいびつであり、その是正ないし均衡策がない限り矛盾は拡大し続けるとの予測をしている。ただしその実態はベールに包まれているとも警告している。
曲りなりにも数字を公表している我が国とは異なるし、そもそも交代が前提としてない政権での限界について危惧している。

現時点でも中共のやろうとしていることはわからない。南シナ海でも東シナ海でも中印国境でも領土でもめ事を続けているし、一帯一路が債務の罠と呼ばれてもやめつ気配はないが逆に不良債権の罠に陥ってる気もする。借金の方に国を取るとか今の時代にできないだろう。

著者は僕の印象ではどちらかというと中国にシンパシーを持っているようだし、発展して良き隣人でありたいと考えているようだと感じた。
そんな著者の期待もむなしく悪い方向にしか向かってないような気がする。このままいくと人生70年定年制とか、新興宗教のように堂々結婚式で強制出産とかやりだしかねない。その前にさすがに国民が切れそうだが。

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☆3

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