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「パレスチナ現代史」岩のドームの郵便学 内藤陽介

アイキャッチは著者のX(旧ツイッター)のプロフィールです。

年末年始、横浜居市立図書館はシステム更新のため長期の休館日なので、割とボリュームのある書籍を数冊借りてきている。中では比較的読みやすい分量の内藤陽介氏の著書。
郵便資料で歴史を読み取る「郵便学」については内藤氏以外知らないが、ユニークだし特に近現代史では有効な視点だとおもって数冊読んでいる。
今回は昨年秋からのイスラエルによるパレスチナへの過剰と思える反撃の方に際して、パレスチナ問題の理解が足りてないことを反省して借りてきた。

もともと今回の戦闘とは直接関係しない時期の出版であるのでシオニズムの発生から2015年ころまでの内容である。郵便資料に根差した内容なので出版の2017年に近い時期のことはやや端折った記載になっているが、それ以前のシオニズムに対するアラブ側の対応について、時系列を理解するには非常に読みやすくわかりやすいと感じた。

もともとは副題の「岩のドームの郵便学」という連載だったとのことで、確かに内容では岩のドームの郵便資料の記述がこれでもかと出てくる。実態に詳しくないのでよくはわからないが、そのことがむしろイスラエルととりわけパレスチナにとって、この終わらない戦争の意味が象徴的に伝わってくる印象が残った。

同じ絶対者をいただく宗教でありながら、どうしてこうも争いが続くのか八百万の神々をいただくプリミティブな民である(?)僕には理解できないが、双方の動機に関しては概略把握できたかもしれない。またイギリスが悪いという印象はやや払しょくされたようにも思う。確かに当時のイギリスはずるかったがまた稚拙でもあったと思う。

内藤氏の手法での歴史の把握は、文書化されていない雰囲気・意向を読み取ってくれるので興味深く時系列を追うことができるので読みやすい。
現在のパレスチナ・イスラエルの問題をみるときに、アタマに入れておくべき内容がしっかり入って、そのうえで著者の私見的なものが少ないので、良かったと思う。

☆3.5

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